はたがや日和~JFPA相談室へようこそ!~【851号】
東京都不妊・不育ホットライン相談員 田中 さとみ
妊活中の方々にとって、年末年始は一年で一番過ごしづらい時期ではないかとお察しします。自分自身の経験を顧みても、この時期は「親元に帰省」する慣習があり、また仮に帰省しなかったとしても「家族写真付き年賀状」が一方的に手元に郵送されてくる、という試練がありました。
先月のお正月にもご自分の実家あるいは義実家を訪れた方々が、その際に感じるストレスについて「#帰省ブルー」とタグ付けしSNSで発信しているのがたくさんあり、その中には妊活中の方であろう発言も見られました。「仕事は?」→「結婚は?」→「子どもは?」→「2人目は?」…親や親戚などの近しいからこそ浴びせられる言葉はエンドレスです。
ホットラインには妊活中の当事者以外にも、そのご両親(実親も義理親も両方)や、ご兄弟からの電話もあり、中でも実のお母様からの電話が一番多く、かつ内容もさまざまです。
「まさか私の娘・息子が不妊だとは考えてもみなかった」
「子どもから不妊治療をやっていることを打ち明けられたが、何と言葉をかけていいかわからない」
「治療代を援助しているが、どんな治療をしているのか聞こうとすると「やめてくれ」と言われる」
「どうしても孫がほしい!!しかし子ども夫婦が不妊治療を受けようとしない」…など。
そうして最後は、「私には何ができるの? どうしたらいいの?」と仰います。そんな時には「お母様は、お子様たちを見守ってあげてください。もしお子様が「話をしたい」と言う時には、静かに聞いてあげてください」とお伝えするしかありません。
当事者はお子様夫婦ですから、たとえお母様でも一定の距離感をもってお子様と接してほしい、とお伝えします。
そんな中、あるお母様からの電話が全く異なる内容だったのが衝撃的でした。
「娘から不妊治療の悩みを聞いているうちにだんだんと私を責めてくるようになり、最近では攻撃的なことしか言わないので、娘の力になりたい気持ちはあるが会うのがとてもつらい。シングルマザーで人一倍頑張って娘を育ててきたが、娘は娘なりに大きな寂しさやつらさを秘めて成長したようだ。最初は治療の悩みを聞いていただけだったが、娘がどんどん昔の気持ちを思い出して私を責め立て「子どもができないのはお母さんのせいだ」とまで言うようになった。私自身も精神的に限界です」というもので、不妊治療のつらさが過去のつらさを導き出し、母娘の確執を生み出し追い詰められている苦しそうなお母様でした。
お互い最も近しい存在がゆえに生じる怒りや罪悪感、それでも頼りたい・力になりたい気持ちが痛いほど伝わってきましたが、この時にも前述同様にたとえ母娘でも一定の距離感をもって接してほしい、とお伝えしました。難しいと思いますが家の中ではなく外出先で会うようにするなど、お母様の心を守るためにも今までの距離感を見直してみてはどうでしょう、と。一番近い存在だからこそ生まれる母娘の確執。距離を保つには一番困難な存在だろうなと実感したお電話でした。
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