ピル承認秘話

ピル承認秘話―わが国のピル承認がこれほど遅れた本当の理由(わけ)―第87話 ピル、遂に承認へ。6月にも

 1999年3月3日に開催された中央薬事審議会の常任部会の様子は、日本経済新聞夕刊をはじめ、国内外の各種新聞が翌日の朝刊で報道している。この中から、「低用量ピル承認 厚生省が6月にも 秋から販売 申請以来9年」と大書された毎日新聞の記事を以下、紹介したい。

 低用量ピル(経口避妊薬)の承認問題を審議してきた厚生省の中央薬事審議会常任部会の審議が3日終了、6月にも厚生省によって医薬品として承認されることが確実となった。今週には医師の処方による販売・投薬が始まる見通し。承認申請から9年、欧米から大幅に遅れて解禁される。

 この日の常任部会では、承認・販売後に行う性感染症に関する啓発活動や情報提供のあり方などについて下部の医薬品特別部会で検討させることを決め、6月に開く常任部会で承認が妥当とする答申を厚生大臣に行う。(中略)国内で承認申請しているのは現在9社16品目。承認されても医療保険は適用されない見通し。

 平井俊樹・厚生省審査管理課長の話 「多方面から意見をいただき慎重に審議してきた。9年という審議期間は妥当なものだったと思う」

 同日版社会面には、「ピル鎖国に終止符 『避妊の選択肢増えた』『新たな薬害の批判も』」の見出しで、小川節子、小島正美両記者の記名記事がある。

 「中央薬事審議会は3日、申請から9年という異例の長期審議を経てようやく低用量ピル認可への道筋を開いた。女性主体の避妊方法が認められたことに、医師や女性団体は『本当の意味の男女平等、強制に向けた第一歩になる』と歓迎する。日本家族計画協会理事長の松本清一さんは、『やっと世界の仲間入りができた。開発途上国から避妊の技術援助を求められても、低用量ピルが使えないため、お手上げ状態だった』と、外圧の強さを強調した。また、現在避妊のために中・高用量ピルを服用する女性が20万人いる現状に、医師の立場から『副作用が小さいことがわかりながら、低用量ピルを処方できずつらかった』と話す。

 御茶ノ水大学ジェンダー研究センター長の原ひろ子さんは『避妊の選択肢が増えた意味は大きい』と評価する。今後は正しい情報を女性が手に入れること、その上で適した避妊方法を選択しなければならないと、指摘する。

 こうした推進派に対し、内分泌かく乱物質(環境ホルモン)の観点からピル認可に疑問を抱く産婦人科医の武田玲子さんは『カラダに残留した低濃度のホルモン様化学薬品が、服用する女性や胎児に及ぼす影響を考えることが重要です。無批判にピルを取り入れることは新たな薬害の原因となります』と、危険性を強調する。

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