海外情報クリップ 思春期女子の性暴力被害
アイルランドからの報告
アイルランド国内において小児・思春期(12~17歳)の性虐待は、全体の約2割に及ぶことが政府の性暴力・性虐待報告書によって示されています。小児から思春期は性虐待・性暴力の被害リスクが高く、またその身体的・精神的影響がその後も長く続くことを考えると、事案の背景を詳しく調査することが重要です。
ダブリンのロトゥンダ病院性虐待被害者診療科の研究者らは、成人被害者との違いを明らかにする目的で、国内に6か所の拠点がある性被害治療ネットワーク(SATU)の記録(2017~22年)から女性被害者約5千人を成人(18歳以上)と小児・思春期(18歳未満、平均年齢16歳)に分けて分析しました。
その結果、小児・思春期女子の被害者数は延べ1,014人で、6年間で約30%増加しました。成人女性被害者との違いは、まず、被害発生から受診まで1か月以上も遅れた例は全体の18%で、成人の場合(8%)より多く、その間に身体検査を受けなかった割合も15%と成人(5%)に比べて高いことでした。
このほかの特徴では、事案が発生した曜日は週末が60%と多く、場所は野外(公園など)(18%)、加害者の自宅(18%)、被害者の自宅(13%)、車中(6%)の順で多いという結果になりました。加害者の背景は、知人(22%)、見知らぬ人(21%)、友人(20%)、知り合って24時間以内の人(14%)、家族(9%)などでした。また発生した時間帯は朝8時から夜0時が多く(58%)、外傷は全体の3割で認められ、被害者本人の飲酒や薬物使用は成人の場合より低い傾向が見られました。
SATUにより、アイルランドの性犯罪被害者への救援がシステム化されて、さらに性犯罪に対する社会の認識が高まったことで、犯罪報告件数は2023年から減少に転じました。
参考 Kane D, et al. Journal of Forensic and Legal Medicine. 2024.101