海外情報クリップ 妊娠中絶に対する医学生の意見~Ipasのインターネット調査~
安全な人工妊娠中絶を受けるためには、患者がすぐにアクセスできる場所に中絶処置とケアに熟達した医療従事者が常在していることが不可欠です。しかし医療側に否定的な考え方がある場合、特に医療資源に乏しい環境ではかなり制限されるのが現状です。このため患者は時期を逸し、安全ではない方法に頼り、後遺症や死に至るケースが後を絶ちません。一方、医学教育の現場は、中絶の手技と患者の権利に関する知識を得る良い機会です。
そこで、今の医学生が抱える中絶に対する考え方や教育課程とのギャップを把握するため、Ipas(妊娠中絶と避妊の教育を提供する民間公益団体)は、85か国1,699人の医学生にアンケートを取りました。その結果は次のようでした。
中絶は自身の信仰やモラルに反すると回答したのは約2割で、8割以上は安全な中絶は必要かつ女性の権利であると肯定的で、産婦人科課程以外の学生も同様でした。しかし、全体の約6割の医学生は個別の背景によると考えており、中絶施行の前提条件として回答したのは以下の通りでした。母体の健康状態が危機的状況にある(91%)、レイプ被害(87%)、胎児異常(84%)、近親姦(78%)、保育能力を欠く(65%)、退学させられる(59%)、未婚(45%)。さらに、いかなる理由でも中絶はしない(8%)、他施設への照会もしない(10%)などでした。
逆に、いかなる理由でも要望があればいつでも施行するとの回答は40%でした。また教育課程では、中絶関連の講義が1つのみだったと過半数が回答しました。なおこの調査対象は約7割が女性、8割が20代、欧州からが約半数で3割がアジア、宗教はカトリック信者が33%、その他のキリスト教徒が15%、イスラム教徒とヒンドゥー教徒がそれぞれ6%で、無神論者などが32%でした。
参考:Jaunsonyte E et al., Frontiers in Global Women’s Health. 2024 Mar.
(翻訳・編集=オブジン)