第29回松本賞 原田省氏(島根県)に受賞決定

原田 省 氏
日本家族計画協会の故松本清一元会長の名を冠した顕彰制度で、わが国におけるリプロダクティブ・ヘルスの分野において活躍している第一人者に対し、その功績を讃えて贈呈する「松本賞」。その第29回選考委員会が3月28日に開催された。
当日は、選考委員会委員ならびに過去の受賞者のうち故人を除く30名を推薦人として、推薦された候補者の功績調書をもとに、厳正な審査が行われ、現鳥取大学学長である原田省(たすく)氏(67歳)の受賞が決まった。これで受賞者数は41名。内訳は医師38名、看護職3名となった。
選考委員会は、木下勝之(日本産婦人科医会)、小西郁生(日本産科婦人科学会)、吉村泰典(日本生殖医学会)、高松潔(日本女性医学学会)、勝部まゆみ(ジョイセフ)、北村邦夫(本会)(敬称略)から構成されている。
原田氏は、1958年に兵庫県で生まれ、83年に鳥取大学医学部医学科を卒業。卒業後、同大学医学部附属病院産科婦人科に入局。85年には英国リーズ大学に留学し体外受精技術を学んだ。帰国後89年に鳥取大学医学部助手、93年講師、2007年准教授、08年に教授に就任。その後、12年に医学部附属病院副病院長、17年に副学長および医学部附属病院長、23年には理事・副学長を歴任。25年4月1日からは、鳥取大学の学長として4年間の任期を務められる。
原田氏の専門分野は産婦人科学および生殖医学で、特に子宮内膜症の研究において世界的に注目されている。子宮内膜症の増殖・進展機構の解明と新たな分子標的治療の開発に取り組まれ、子宮内膜症の細胞増殖に炎症反応が関与していることを明らかにされた。我が国における、子宮内膜症と月経困難症の治療薬開発に医学専門家として参画され、ルナベル、ディナゲスト、ルナベルULD、ヤーズフレックス、ジェミーナ、レルミナ、アリッサの臨床応用に貢献。また、11年には鳥取大学医学部附属病院に新設された低侵襲外科センター長に就任し、診療科の壁を越えた横断的な診療体制を構築。このセンターでは、ロボット手術を核とした先進医療を推進し、19年6月にはロボット手術の症例数が1,000件を突破、25年3月現在で約3,500件に達している。さらに、病院長として医学部附属病院の経営改善にも尽力され、広報活動を強化して部門間の連携を促進し、チーム医療を推進された。事務部門と医療現場のコミュニケーションを改善し、経営効率の向上に寄与されている。
日本産科婦人科学会理事、日本生殖医学会常務理事、日本産科婦人科内視鏡学会副理事長、日本受精着床学会理事、日本内分泌学会代議員、米国内分泌学会会員、米国生殖医学会会員、Asian Society of Endometriosis and Adenomyosis President、World Endometriosis Society Board Member、Society of Endometriosis and Uterine Disorder Board member、日本エンドメトリオーシス学会理事長など、国内外の学会で重要な役職を務められた。
原田氏の座右の銘は「置かれた場所で咲きなさい」であり、与えられた環境で最善を尽くす姿勢を大切にされている。25年4月からの学長就任により、これまでの豊富な経験と専門知識を活かし、鳥取大学のさらなる発展に寄与されることが期待されている。
以上、原田氏の女性のセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツの向上に関する幅広い功績は由緒ある松本賞に値するものと評価され、今回の受賞に至ったものである。