OC/LEPが私の医師人生をどう変えたか 55 避妊のためにピルを選択するのは誇れること

私にとってのピル
もともとのピルのイメージは、聞いたことはあるけど病院に行かないといけないし手に入れるのは心理的に敷居が高いというものでした。その後大学生のときに北村先生(本会会長)の講演を聴く機会があり、避妊効果が高いことに加えて出血時期がコントロールできることに衝撃を受けました。
私は長い間月経不順で出血がいつ始まるか分からないストレスに悩まされていました。月経痛の人に比べると大した悩みじゃないと思いつつやはりめんどくさいものだったので、それが解消できるならとピルを試してみることにしました。副作用として心配していた血栓症についても「妊娠したら血栓ができるリスクはピル服用よりもさらに増加する。その妊娠を防げるのだからむしろ血栓リスクを下げるともいえる」とお話しされていて、そのような考え方での説明もできるのだと感動した記憶があります。しょっちゅう月経が遅れて妊娠の不安がつきまとっていた私は、より確実な避妊に加えて自分の予定に合わせて出血をコントロールできるようになりとても快適で安心な生活を手に入れることができました。その後もピルを調整することで結婚式も新婚旅行もコンディションの良い状態で臨むことができ、妊娠を希望するまで内服を続けました。ピルを中止しても元々の月経不順はありましたが4人の子どもに恵まれ、「ピル飲んでいると妊娠しにくくなる神話」を恐れる患者さんには自身の体験も交えて説明することで安心されることもあります。
避妊法としてのピルとSRHR
普段勤務しているのが総合病院だからか、避妊目的でピル処方を希望される方がほとんどいません。付属の健診センターで行う子宮がん検診でもピルを服用している方は内診の際に服用目的をわざわざ「月経痛で」とおっしゃるのです。月経困難症での適応ができたことで飛躍的にピルの使用が広がり痛みから解放される女性が増え、月経痛や過多月経は婦人科に受診するべきという認識が広まったことは喜ばしいのですが、避妊のためだけに飲むことを後ろめたく恥ずかしいことと感じている方がまだ多いような印象を受けています。避妊方法としてピルを選択することは「自分のからだのことをしっかり考えて行動している」とむしろ誇らしく捉えてほしいです。そのように言える社会にしていくのも私たちの仕事と考えています。
思春期外来でのOC/LEP
思春期世代が婦人科症状のみならず広く性の悩み相談ができるような場所を作りたいと考え、2021年に専任スタッフとともに思春期外来を開設しました。養護教諭の先生方に知っていただくようになり、遠い地域からもお越しいただけるようになりこれまで100人以上のご相談をいただきました。やはり月経にまつわる症状の相談が多く、生活指導を含めたさまざまな治療法を提示しどのようにすれば本人の生活が楽になるのかを一緒に考えます。特にOC/LEPについては多くの先生方がおっしゃるように保護者を含めて丁寧な説明を行いさらに本人が自ら選択するというのが治療継続のカギだと実感しています。どのような治療であっても中止や継続について本人の意思が尊重される体験が重ねられることで、SRHRの意識が育まれていくと信じ今後も診療に当たりたいと思っています。今後ともご指導のほどよろしくお願いいたします。
今月の人
丸山 祥代 (まるやま・さちよ)
奈良県立医科大学卒業。JCHO大和郡山病院で2021年より思春期外来を開設、小学生から男女問わず相談に対応している。現在はユースクリニックの開設を目指して活動中。思春期保健相談士、日本思春期学会性教育認定講師。