OC/LEPが私の医師人生をどう変えたか 54 ”令和の当たり前” もっともっとたくさんの女性に選択肢を

丸の内の森レディースクリニック(東京都千代田区)理事長 宋 美玄
OC/LEP処方は令和の時代の“当たり前”に
現在、私の仕事の大半はOC/LEPを処方することだと言っても過言ではありません。2017年以来、都内でレディースクリニックを営んでいますが、産科は別として、婦人科の患者さんのかなり多くの割合の方にOC/LEPを処方しています。避妊、生理不順、月経困難症、過多月経、PMS…。生殖可能年齢の女性のうち、かなりの割合の人が直面する場面や不調に対し、OC/LEPを処方しています。これは令和の時代のレディースクリニックではごく当たり前の診療ではないでしょうか。
治療の選択肢が少なかった当時を思い返すと…
産婦人科医になって24年経ちますが、私が研修医の頃は、OCはあったけれどLEPは存在せず、月経困難症や過多月経の患者さんへの治療の選択肢は今に比べるとすごく限られたものでした。生理痛を主訴に来られた患者さんには、超音波検査をして「子宮筋腫や明らかな子宮内膜症は見当たらないので、病気じゃないですよ。痛み止めを飲みましょう」という対応をしていた先生方が多いのではないでしょうか。過多月経の患者さんには、鉄剤を処方し続ける。手術適応のある病変や明らかな子宮内膜症がない限り、ホルモン治療という選択肢はほとんどありませんでした。自費診療としてOCを服用している患者さんもいましたが、ごく一部でした。
さらには触れることすら許されない風潮も
15年くらい前からインターネットや書籍、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなどあらゆる媒体で情報発信を行っているのですが、「生理」というコンテンツが人気になったのはほんのここ数年のことです。
特に、「ピル」という単語は、それまでとてもセンシティブでネガティブなものでした。テレビや雑誌で、女性モデルの方や芸能人の方と体のケアや健康について対談するお仕事の中で、「ピルを飲んでいます」ということをお話しいただいても、編集さんやディレクターの方に「自由にお話しいただいて構いませんが、後でピルの部分はカットします」と言われていました。スポンサーの意向というわけではなく、視聴者からクレームめいたご意見が来るからとのことでした。
承認され長い年月をかけて変わってきたイメージ
LEPが承認されてから、本当に婦人科診療は大きく変わりました。初めの頃は「ホルモン剤=不自然」というイメージが浸透していて、患者さんに試してもらう気持ちになってもらうのが大変でした。
種類が増えたり、ジェネリック薬が増えたりしたことで、一人一人に合った製剤にたどり着きやすくなりました。長い年月が経ち、少しずつ恩恵を受ける人が増え、さまざまなメディアでも「ピル」について取り上げられるようになってきました。中には、「先生、どうしてピルはこんなに広まるのが遅いですか?」と聞いて来られる媒体の方もいます。偏見や情報不足、アクセスなどさまざまな理由があるかと思いますが、メディアが「ピルはセンシティブ」という自主規制をしていたことを知らない世代も増えてきたように感じます。
これからももっと多くの女性が活用できるように
今では「生理痛を軽減したいのでLEPを処方してほしい」と患者さんの方から希望されることも珍しくありません。自分自身もかつてのユーザーでしたが、OC/LEPは私の婦人科医としての人生を大きく変えました。もっと多くの人にOC/LEPという選択肢が知られ、産婦人科にかかりつけることで、避妊に不安なく、月経周期に振り回されることなく生活できる女性が増えてほしいと願っています。
今月の人
宋 美玄(そん・みひょん)
産婦人科専門医・医学博士・FMF認定超音波医・日本産科婦人科遺伝診療学会認定医
1976年、兵庫県神戸市生まれ。2001年、大阪大学医学部医学科卒業。大学卒業後、大阪大学医学部附属病院、りんくう総合医療センターなどを経て川崎医科大学講師就任。
2009年、ロンドンのFetal Medicine Foundationへ留学。胎児超音波の研鑽を積む。2015年、川崎医科大学医学研究科博士課程卒業。周産期医療、女性医療に従事する傍ら、テレビ、インターネット、雑誌、書籍で情報発信を行う。産婦人科医の視点から社会問題の解決、ヘルスリテラシーの向上を目的とし活動。
2017年、丸の内の森レディースクリニックを開業。2024年、医療法人社団ベラフォレスタを設立。現在に至る。
